• 「どんちゃんガラスを吹く」の巻

     先日、どんちゃんに電話した。
    もう10年以上も前に近所のデパートで開催された、ガラス作家である彼女の展覧会を観に行って以来ご無沙汰していた。予備校時代と変わらぬ優しく澄んだ声が懐かしく、オリエンタルな美貌を持ちながらそれを知ってか知らずでか、ぐりぐり眼鏡をかけ人懐っこい笑顔でアトリエ中の男の子の心を虜にしていた、膨らんだオーバーオール姿のどんちゃんを思い出した。
     朝早くからお昼過ぎまで、室温48度の工房の中での作業で、あまりの暑さに耐えきれず、子どもが帰ってくるまで仮眠をとるということだった。朝見たYahoo!ニュース情報によれば、彼女の住む辺りでは猛暑で気温が37度以上になっているはずだ。うんうん!スポーツ飲料でも飲んで水分,塩分を補給して涼しい所ででしっかり休んだほうがいい。
     
     思えば彼女は予備校時代から“キラキラ光るもの”“優しく可愛いらしいもの”が好きだったなあ。皆が芸大芸大と、ギラギラギトギト油絵の具に塗れていた時も、彼女らしいキラキラ優しい絵を描いていたなあ。自分の心に響くものを信じて追求してきたんだね。
     
     真夏の室温48度の工房で、息も絶え絶えにガラスを吹くオーバーオール姿のどんちゃんが見えた。命懸けだな。人に買ってもらうものを作るって、生易しいことじゃないんだなとしみじみ思った。
     

     

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