• 河童

     いつも通っているお気に入りの図書館にて、原田宗典氏・荒井良二氏の『河童』の絵本を借りて読んだ。ところが私は芥川龍之介の『河童』を読んだことがなかった。家の本棚にある芥川の本の中に探せばあったのかもしれないのだが、先日神保町の本屋に立ち寄った際、“この夏オススメの本”として紹介されていた本の中に『河童・或阿呆の一生…新潮文庫』を見つけ、つい買ってしまった。
     最晩年に書かれた短編6編の中、迷わず『河童』から読んだ。うっかり先に絵本から読んでしまったので、荒井良二さんの絵の“河童”たちがうようよ集まってきた。ガヤガヤうるさいので「しー」と静かにしてもらった。皆も頭を並べて覗き込んだ。
     家族を持つこと,子どもを産むこと,恋愛,政治,法律,戦争,芸術,宗教,生活,欲等、自分を取り巻く現実世界を必死で見つめながらどんどんどんどん孤独を極め、“自殺”の幻想に取り憑かれていく。そのぐにゃぐにゃな世界の中に居てはっきりと見えたものをとにかく書いていったのかな。世間から芥川先生と呼ばれてしまう自分とは別の、格好悪く怯えながら苦しみながら喘ぐそのままの自分の日記のような…。
     自殺しないで長生きをしてたとしたらどんなものを書いただろうか。振り返ると河童の内の一人が腕を組んでじっとこちらを見つめている。一言「Quax!」

     しばらくは、朝ドラに影響されて朝食時になんちゃって方言で話してしまうように、子どもたちと喋っていても「Quax quo quan ?」quax quax quex なんつって言ってしまって、「なにそれ、カエル?」と言われてしまった。

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