• ゆきちゃんのダンス 重ね合された予期せぬ4つリズム JIZAIKAN



     19の春、私は1浪,彼女は現役で美大の同じ絵画専攻クラスに入学し、大学で紹介された女子寮で一緒になり、それから20年以上の付き合いです。
     出会った頃の彼女は、ハックルベリーかジムシーのようでした。
    初めて見るゴキブリに驚いたり、初めての明太子が気に入って、薄皮をひっくり返して剥きながらぺろぺろ食べ、きれいにその皮を指にはめて喜んでいました。
     高校時代に描いたというたくさんのアクリル画(記憶違いかな?)を見せてもらいました。その中の一枚に麦畑の絵がありました。青く高い空の下黄金に輝く一面の麦畑、何より印象に残っているのは、その絵の中を吹き抜ける風です。宮沢賢治のお話の中で吹く風の様でした。絵の中には描かれていなかったけど、お腹いっぱい胸いっぱい風を吸い込んでまっすぐ立つ彼女の姿が見えたような気がしました。
     彼女の白目はいつも青く透き通っていて潤んでいました。遠くを見つめる彼女の横顔を覗くと、その白目に夕日が映り込むのが見えました。

    彼女は今もまっすぐ立っています。
    彼女は何も持っていません。
    どうと吹く風を身体全部で感じながら。

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